企業のDX化に不可欠な『業務の見える化』〜データの流れの可視化と業務プロセスの整理 

1.はじめに 

多くの企業がDX化に取り組んでいますが、DX化においては『業務を見える化』『業務現状の評価』、そして『意識的な改善活動』が必要不可欠です。しかしながら、実際には部門間の業務配置の調整や、様々な業務システムが導入されることで業務が複雑化し、DX計画の推進を難しくさせています。 

本記事では、この様な企業の事情を踏まえDX計画の推進に必要不可欠な『業務の見える化』と、それによる業務改善について紹介いたします。 

 

2.DX化のための業務改善の現状 

2-1. 業務改善が注目される背景 

経済産業省は、DXについて「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義*しています。                 

*出典/経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」より抜粋  

 

この様なデジタル技術を利用し事業効果を出していける体制構築には、事業が業務の集合であるということから、まず”現状業務を把握”することが第一歩です。 

しかし、レガシーな業務システムを運用し、部門間で業務が根深く繋がっているといった事情から、業務把握が難しいというケースもあります。この様な状況によって、企業の多くではより強く業務改善を意識することとなり、DX化に向けた事業体制の変革よりも業務効率化を最優先に、現状の業務プロセスの見直しをせずクラウドサービスやRPAを導入するケースが多く見られます。 

 

2-2. DX化を目的とした業務改善の市場 

業務効率化が意識される一方で、DX化では以下の2点が求められます。 

    

    1.デジタル技術を利用した継続的な業務改善 

    2.新たなビジネスモデルの創出など、事業効果を出していける体制 

 

DX市場としては1点目の部分への注目が強くなることで、プロセスマイニングやプロセスモデリング、RPA、AIなどのデジタル技術が次々と開発されています。しかし多くの企業の中では、これらのデジタル技術を取り入れること“だけ”に注力してしまうことで、「継続的な業務改善」や「事業効果を出していける体制」の部分が “おざなり”になっている状況も見受けられます。 

こういった状況下においては、「デジタル技術を採用したは良いが事業効果が不明慮」となっているケースも多々あり、DX化を目的にした“業務改善の仕方“が益々注目されています。 

 

2-3. DX化に対する企業の現状と課題 

ところで、なぜDX化で重要なポイントが “おざなり” になってしまうのでしょうか。下の図は、経済産業省が公開しているDXの流れと、企業がDX計画を推進する上で期待される取り組みや克服しなければならないポイントをまとめたものです。この中で、複雑化したレガシーシステムのため業務がブラックボックス化しDX化の壁になっていることを指摘しています。 

 

DXシナリオの実現に向けた現状と課題 ―既存システムのブラックボックス状態を解消できない 

   ・データ活用しきれていない 

   ・DXへの要件定義が不明確 

   ・IT部門は、利用者(要求・不満)の対応に追われる 

   ・システム刷新は、長期間にわたりコストとリスクが不安 

   ・ベンダー丸投げ、責任はベンダー企業が負うケースが多い 

   ・DXの取り組み中にゴールが変化する 

   ・各関係者の役割が不明、または担えていない 

参考:『経済産業省 DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を基にPCJが独自に作成

 

業務基盤となる既存システムのカスタマイズを繰り返すことで、業務の複雑化や業務プロセスのブラックボックス化を招いており、DX計画を推進する中で、要件定義や期待効果が不明瞭となっています。この状態のままだと2025年以降に多大な経済損失を招くと警鐘を鳴らしています。

 

2-4. 課題解決のポイントは「業務の見える化」 

このような状況に対して、経済産業省では対応策として『「見える化」指標と、診断スキームの構築』を提示しています。DX化の本質は、対応策を継続的に維持していくPDCA計画を立案し実行することと、それを実行する事業体制作りです。同時に、これらの業務の中で得られる業務データを有効活用できる体制も必要不可欠です。得たい情報への入手、共有、そのスピード、正確性、安全性を維持継続できる業務データの利用が事業効果には欠かせません。 

 

DXシナリオの実現の課題に対する対応策  「見える化」指標と、診断スキームの構築 

   ・ITシステムの現状と問題点を把握 

   ・中立的な診断スキームの構築 

   ・データ活用のしやすさ等の情報資産の現状を把握 

   ・DXへの体制や実行プロセスの現状と今後を定義 

   ・AsIsとToBeイメージの共有 

   ・業務要件の細分化によるシステム刷新の大規模化・長期化に伴うリスクを回避 

 

経産省が示す対応策はこれらの体制を築くために抑えなければならないポイントですが、すべての指標に共通するのは『業務の見える化』です。 

次項では『業務の見える化』の流れについて紹介していきます。 

 

 

3. 「業務の見える化」とは 

 

昨今、プロセスマイニング、プロセスモデリングといったデジタル技術で業務の見える化・可視化を提供するソリューションがあります。これらは使用している業務システムでの業務作業をトレースしている(ログされている)ことが条件となり、ログを収集して業務の可視化を実行する仕組みです。 

業務システムでログされている業務プロセスであれば極めて有益な業務の見える化ができますが、複雑化したレガシーシステムにおいては業務作業がログされていること自体が稀です。そもそもExcelやPDF、ローカル保存、ファイルサーバー共有、メール添付というローカルPC上での作業もまだまだ多く、これらの業務の見える化は困難です。

 

3-1. 業務を見える化する効果 

デジタル技術が提供される機能は全て業務データを扱う機能といっても過言ではありません。業務作業とは、『周辺システムからデータを入手する、登録、変更、削除する、周辺システムへ出力する』の繰り返しですので、「業務のムダ・ムラ・ムリ」とはデータ入力・更新・出力の作業シーンに存在します。 

 

プロセスマイニングなどのロジックでは収集できない業務作業であっても同様です。業務の見える化では、どの業務作業がムダ/ムラ/ムリであり、どの範囲の業務作業でデジタル化が可能か見極めていきます。これを通して、DX化で重要となる「改善し続け、事業効果を出していける体制」づくりの中で以下の点が明確になります。 

  ・何をどうやって改善すればよいのか 

  ・どこ(部門毎)から、何から(業務毎)、何のため(目的)、の視点で具体的 なDX化計画 

  ・期待できる事業効果 

 

32. 業務を見える化する流れ 

これらを明確にするための業務見える化にはいくつかの手法がありますが、多くの場合、以下の流れで進められます。 

業務の見える化の基本は、実際に行っている業務作業を棚卸し、ヒト/データ/ツール(テクノロジー)/コストを軸として、業務棚卸、業務機能、業務フロー、業務体制などの可視化データとして整理・作成していきます。また、金融、保険、製造など各業界の業務には、SOXやISOをはじめとする業務フレームワークが存在します。そして、業務フレームワークと照らし合わせ評価しながら課題を分析していきます。 

業務フレームワークに当てはまらない、関連周辺業務、バックオフィス業務などは可視化データから因子分析、ABC分析、時系列分析などの分析手法を使い定性/定量で表現し課題を見つけていきます。 

 

4. PCJは『業務の見える化』を支援します。 

 

今回の記事ではDX化に向けた業務改善とそれを進めるための「業務の見える化」について紹介してきましたが、パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社(PCJ)でも、DX化への対応策となる「業務の見える化」に関し、以下のコンサルティングサービスを展開しています。 

41ITサービスマネージメント業務改善コンサルティング 

企業のIT部門は、経営目標と直結した極めて重要なミッションを担っています。それを踏まえ、お客様のITライフサイクル全般に渡ったITサービスマネージメント業務のアセスメントを提供します。 

企業の経営目標とDX化計画への寄与を念頭に、お客様のITサービスマネージメント業務の現状を、 ITIL® フレームワークにて評価し、課題と改善策をレポートします。  

4-2.  コンタクトセンター業務改善コンサルティング 

コンタクトセンター部門においては、昨今の傾向としてプロフィットセンターへの移行という課題を抱えていることを踏まえ、コンタクトセンター業務のアセスメントを提供します。 

業務のみのアセスメントだけでなく、コンタクトセンターの機能となるDX時代の新たなサービスチャネルとCX戦略、顧客満足度向上への更なる対策、業務プロセス面の改善などに関し、グローバルベストプラクティスとなるICXI準拠で評価し、施策や方向性をレポートいたします。 

4-3.  業務プロセスの見える化コンサルティング 

間接部門、バックオフィス業務も含め、部門毎の業務を細分化し見える化を行い、DX化計画の大規模化、長期化の回避を図ります。 

業務作業とデータの扱いを棚卸し、データI/F図、業務フロー、業務体制図などへ可視化し課題と改善案を分析しDX化に向けた具体計画の策定を念頭に施策や方向性をレポートさせていただきます。 

5.おわりに 

DX化の中では、業務プロセスを『データの入手・データの更新・データの出力』といったデータ活用の流れと捉え、データの流れを追うことで業務の見える化が進みます。その上で、業務分析作業によりデータ扱いのムダ・ムラ・ムリを発見していきます。 

DX計画を進める上で業務改善のベースとなる『業務の見える化』は多くの企業にとって喫緊の課題です。取り組んだ業務分析結果が如何に現場目線で現実的であり、具体的にイメージできるものか、また業務改善にとどまらずどのようにDX化に寄与できるのか、引き続きPCJでも知見を深め、発信していきます。  

 

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