中国では通信インフラの拡充と、スマホやPCといった端末を保有するユーザーの増加に伴い、生活の中の様々なシーンがオフラインからオンラインで対応できるようになりました。中でも特にスマホアプリは幅広い年齢層に受け入れられ、生活必需品と呼べる状況にあります。スマホアプリは、現在の中国を知る上で最も身近なテーマといえます。そこで、「実際にどういった状況なのか?」「どうやって普及したのか?」「日本との違いは何なのか?」「日本企業が今後設計する上で学べる点はないか?」これらの切り口で中国におけるスマホアプリ市場を紐解き、把握しづらい中国市場を更に見えるようにフォーカスしていきたいと思います。
全4回にわたり中国スマホアプリ市場について様々な切り口から調査結果をレポートします。初回である今回は中国スマホアプリ市場の概況についてお伝えします。
Ⅰ. 中国スマホアプリ市場の市場環境
政策面
これまでインターネット上における法規制の整備が進んでおらず、規制が比較的緩い中でアプリ開発に臨むことができたが、近年は監督・検査が厳しくなっています。2017年サイバーセキュリティ法、2021年個人情報保護法が施行され、個人情報やデータ保護に対する要求が強くなりました。また、未成者のオンラインゲームの利用時間の制限の強化が発表されるなど、健康面にも思慮した製品開発がネット会社の社会的責務として求められています。
経済面
中国通信院のデータによると、中国のデジタル経済の規模は緩やかではあるが、着実な成長分野であることがうかがえます。2020年ではGDP比38.6%を占める大きな市場となっており、2021年のITサービス企業の収入は、2017年と比べて約2倍の1.55万億元に到達しました。また、好況を受け、BATJ(バイドゥ/アリババ/テンセント/JD)を中心とした巨大プラットフォーマーによるスタートアップへの投資も盛んにおこなわれています
社会面
2020年「中国モバイルコンテンツ研究報告」(iResearch社)の調査によると、消費の対象が若者を中心に音楽・動画・ショートムービー・電子書籍・ライブ配信・ゲーム等といった「コンテンツ」に変わってきています。コンテンツにおいては、以下の傾向がみられます。
- 中国ユーザーがコンテンツ商品を選ぶ時、情報のスピード感や配信媒体の知名度ではなく、内容の質(情報量や信憑性等)を重視している
- ショートムービー視聴者は動画を選ぶ時、画質やBGM、撮影効果といったものではなく、ストーリー性や実用性を重視して選んでいる
- UGCのコンテンツがますます受け入れられてきている。代表例として、小説の「三体」はネット配信から始まり、注目を受け映画化を果たしている
- 2020年のコロナ禍以降、その前まで人気があったお笑い・ギャグ関連や旅行関連のコンテンツは人気が下がったのに対して、時事関連等のコンテンツの人気が向上
技術面
基礎インフラの整備と最新技術の発展に伴い、イノベーションがこれまで以上に起こりやすくなっています。10億人以上がアプリやスマホを使用するためには、通信環境の整備や端末の普及が必要です。さらにアリペイ、ウィーチャットペイなど、ペイメント機能を持つアプリが深く浸透し、実社会でも支払い手段として定着していることも特徴です。また、AI技術、クラウドネイティブ、データ連携、SaaS、ミニアプリ、ノーコード等の最新技術によってアプリ開発が仮装しています。
Ⅱ. スマホアプリの使用状況
使用頻度と使用内容
2022年時点で約14億人の人口を擁する中国では、1日あたりのスマートフォンのアクティブ台数は11.06億台、平均使用時間は5.26時間に達します。 全体で見ると、SNS、動画配信サービス、ショートムービー、ニュースアプリ、音楽アプリをスマートフォンに入れているユーザーは6割以上となっており、普段からこれらのアプリがよく使われることがわかります。
年齢別でみると、24歳以下のユーザーはゲームやショートムービーを好んで使用する傾向があります。一方で、25歳から44歳のユーザーは動画配信サービスとSNSが主な使用アプリとなっています
中国におけるスマホアプリのカオスマップ(2022年)
中国で日常生活を送るうえでスマホアプリは欠かせないものになっています。以下のカオスマップから一日の中のあらゆるタイミングで、様々なスマホアプリが活用されていることがわかります。
次回は、「どうやって中国では生活に密着した様々なアプリケーションが普及したのか?」という切り口で、スマホアプリ市場の発展を支える要素である、通信インフラ、端末、ペイメント機能、スタートアップを支えるエコシステムについて触れていきたいと思います。
終わりに
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連載全4回
第1回 中国スマホアプリ市場の概況
第2回 スマホアプリ市場を支える基盤(次回以降)
第3回 最新トピック:ミニアプリの台頭(次回以降)
第4回 日本企業に対するメッセージ(次回以降)