初プロジェクトで実践したイエスセットでの課題解決とは

導入

こんにちは、パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社(以下、PCJ)に、2023年4月に新卒として入社した笹澤です。新卒研修終了後、当時のBT&A(ビジネストランスフォーメーション&アクセラレーション )事業部に配属されました。現在は、後身のストラテジー&トランスフォーメーション(S&T)事業部のプロジェクトに参加しています。

今回は、私が入社して初めてアサインされたプロジェクトの中で得た知識・経験について紹介したいと思います。

キーワード:座席・会議室管理システム、イエスセット

プロジェクト概要

今回のプロジェクトでは、顧客製品の売上向上を目的に、座席・会議室管理システムの市場調査と販売戦略策定の支援を行いました。

コロナ禍後の出社回帰により、近年注目を集めている座席・会議室管理システムですが、今まで日本国内における本格的な市場規模の調査は行われていなかったため、投資をする価値のある市場であるかが明確ではありませんでした。そこで我々は、関連する公開情報や類似ソリューションを販売する競合企業へのインタビューに基づき、当該市場規模を推算、効果的な販売戦略策定支援まで一貫して提案を行いました。今回の提案は、顧客に高く評価していただき、現在も実行フェーズに向けて動き出していると伺っています。

※オフィスDXツールの一種で、オフィスの座席・会議室の利用状況を可視化し、オフィスの稼働状況等の分析を行うことができる

プロジェクトにおける主なタスク

座席・会議室管理システムという未開拓市場をつまびらかにする必要があり、当プロジェクト全体のうち、情報収集に大きなリソースをかけました。デスクトップ調査以外にも、競合製品を開発ないしは販売する企業へのインタビューや類似ソリューションを実際に使っているユーザーに対してのインタビューを複数回行いました。特にインタビューを行う前のアポイントメントの取得業務は骨が折れましたが、貴重な非公開情報を収集し、資料として価値のあるアウトプットすることに成功しました。また、プロジェクトの後半では、調査フェーズで得たファクトをもとに販売戦略の考案と提案資料の作成を行いました。その他にも、顧客との定例でのフィードバックの共有、To Doの洗い出し、内部ミーティングの時間調整など、プロジェクトチームが効果的に働けるようなサポートも行いました。

▲プロジェクトのタスクに関する概要

プロジェクト中の課題とそこから学んだこと(イエスセット)

結果的には、成功といえるかたちで終わったプロジェクトですが、プロジェクトの前半では提案内容になかなか顧客の同意を得られないこともあり、2週間たってもメインの議題に進捗がなかったこともありました。幸い、納期には間に合うことができましたが、プロジェクト終盤は時間的にも体力的にもかなりギリギリでした。今回は、当プロジェクトの遅延解消に役立ったTips「イエスセットを活用した提案」を紹介したいと思います。

イエスセットとは、会話の中で相手から段階的に合意を得る(Yesと言わせる)ことで、本命の質問や提案に対しても「Yes」と答えてもらいやすくするための交渉術です。ビジネスの場では、イエスセットを意識することで、顧客に提案を受け入れてもらいやすくなります。

▲イエスセットについて

どれだけ商材が良かったとしても、どれだけプレゼン資料がロジカルにまとめられていても、伝え方が悪ければ顧客からは未熟な提案だと捉えられてしまいます。実際に、当プロジェクトでも提案内容はほとんど変えていないのに、イエスセットを意識した伝え方にすると合意を得られたという場面が複数回ありました。ここでは当プロジェクトでも役立ったイエスセットを使ったプレゼン例を具体的なパターンに分けて3つ紹介します。

A. 複数の評価軸によって選定した有望な販売代理店の提案

・プロジェクトの状況(As Is)

― 複数の販売代理店の選択がある中で契約候補の販売代理店を1~3つに絞らなくてはならない

― その候補の中には、顧客が以前から有望だと考えていた販売代理店は含まれていない。以前から断片的に、顧客が考える代理店の期待値は小さいことは伝えていたが、この代理店の話題は継続的に顧客から上がっていた

・提案によって達成したい状態(To Be)

― PCJが提案する販売代理店が有望であることに同意してもらう

― 必要性の低い追加調査を依頼されないようにする

― 顧客が以前から想定していた販売代理店候補の期待値が小さいことを認めてもらう

・主な顧客の指摘

「この企業にアプローチしたいのだが、ダメなのか?」、「他の候補がダメな理由が分からない」、「違う企業にアプローチするべきだと思う」・・・

・イエスセットを使った提案例

B. 代理店との契約方法策定

・プロジェクトの状況(As Is)

― PCJがまとめた顧客の商材を販売することによる販売代理店側のメリットについて理解してもらう

― 顧客はどの契約方法を選択すべきか、顧客は判断を迷っている。代理店・契約方式の選定基準、競合他社が採用している契約方法の整理が必要

・提案によって達成したい状態(To Be)

― 調査結果から、PCJが提案しているA型の契約が最も顧客の商材とあっていることを理解してもらう

― 他の契約方法に対する希望度をできる限り下げてもらう

・主な顧客の指摘

「他にもっと良い契約方法があるのではないか?」「うちの商材とあっているかが分からない」「他の契約方法もやってみる価値があるのではないか?」

・イエスセットを使った提案例

C. 定期MTGでの進捗報告

・プロジェクトの状況(As Is)

― 前回定例MTGでのPCJの提案に対し複数の指摘事項があり、顧客は常にその事項の進捗を懸念している

― スケジュール的には問題ないが、今回の定例MTGではその一部しか進捗を報告できない

・提案によって達成したい状態(To Be)

― 指摘を受けた事項はすべて把握した上で作業に取り組めており、進捗的にも問題ないことを理解してもらう

― 仕事を任せても大丈夫だという安心感を与え、今後の提案を受け入れてもらいやすくする

・主な顧客の指摘

「(スコープに含まれない)作業が足りないのでやってほしい」、「以前指摘した部分の作業は忘れていないか」、「前回から進んでいないのではないか?」

・イエスセットを使った進捗報告(報告の最初の方で行う)

実際は、上記のようにうまく進むことは多くありません。しかし、イエスセットを意識することで、顧客の気持ちに沿った提案を行うことができ、顧客からの信頼獲得にも大きく貢献できます。プレゼンはただ淡々と資料を読むものではなく、「顧客との対話」であると意識することが重要です。

プロジェクトを終えて

今回のプロジェクトは約2ヶ月という短期間でしたが、調査から戦略策定までという非常に広いスコープでした。加えて、未成熟である「座席・会議室管理システム」市場に対して、一定以上の示唆を出すことが求められていたため、自分にとってもチームにとっても決して簡単ではありませんでした。一方で、市場規模を算出するためのロジックのつくり方や、必要な情報を得るための調査設計の方法など様々なことを学ぶことができ、コンサルタントとして成長できたプロジェクトだったとも思います。ここでの経験は、現在アサインされているプロジェクトにおいても役立っており、今後キャリアを積んでいった後も活きてくる貴重なものだと考えています。