中国の「今」ダイナミックに変わり行く中国上海  ー都市開発の事例から見る

中国の「今」
ダイナミックに変わり行く中国上海ー都市開発の事例から見る

上海は急激な進化を遂げています。2022昨はロックダウンがあり経済成長に不安を与えたこともありましたが、その勢いは止まりません。

キャッシュレス、シェアサイクル、インスタントリテール等新しいITサービスが次々と世の中にローンチされ、誰もが使うところまで浸透した今日、ITサービスの発展は中国において最も変化を感じるシーンと言えます。ですが、中国の変化はITサービスに限らず、街中を歩いているだけでも感じ取ることができます。

ついこのないだの出来事ですだ、友人と上海新天地で食事をした際、「近くにいいお店があるから飲み直そう」と地図を見ながら別のお店まで徒歩でいくと、そのお店はなく、上海市の市の中心地にいるにもかかわらず、一画すべてが更地に変わっていたということがありました。中国になじみのある人であれば、よく見知った場所と思っていても、「こんなところ知らない」「違う街ではないかと疑うほど変わっている」という経験は珍しくないのではないでしょうか。

このような大規模な街の変化は、各都市の都市開発計画が関係しています。例えば、上海市では五カ年計画をベースとした経済発展のロードマップへの適合や、毎年新たに流入する人に対する新しい居住環境の提供のため、都市開発を積極的に推進しています。

今回は、上海の2つのエリア「黄浦江両岸地区」と「静安区張園地区」の都市開発の事例と、今後の上海大都市圏構想に触れ、ダイナミックに成長を続ける中国の今をお話します。

黄浦江両岸地区

上海市の中心を流れ、市域を「浦西」と「浦東」の二つに分ける黄浦江(こうほこう)は長江の支流であり、西側には上海の中心地で有名な外灘(バンド)、東側には金融の中心地である陸家嘴や世界万博が行われた上海国際博覧会がある。

既に外灘や陸家嘴、上海国際博覧会等中国を代表するエリアが集中している黄浦江両岸地区であるが、12次五カ年計画時に更に徐匯浜江と前灘の開発が発表された。かつては工業地帯や未開発だった土地が、都市開発によって上海の新しいトレンドエリアに変貌している。

大規模な都市開発を行うに至ったきっかけは上海万博の成功にあった。上海万博で残った建造物の有効利用と周辺環境の改善を行うことで、新たな経済成長のキャパシティを生み出そうと考えた。このエリアは開発が行われる以前は、鋼鉄工場、コンクリート工場、空港などが集まった工業地帯であったが、それを郊外に移転し、約600ha分の土地を陸家嘴に変わる第二の金融と貿易の中心地するため金融や貿易会社を誘致した。

商業を招致するだけでなく居住環境にも力を入れている。黄浦江の両岸に26kmの連続する緑地(グリーンベルト)が敷設され、緑地化を推進した。市民はこの両岸に設けられた川沿いの公園を高く評価しており、週末には家族連れなどが集まる憩いの場となっている。

黄浦江は一昔前まで水質が問題視され、その環境の状況から野鳥がなかなか集まらなかったが、緑地には水が浄化できる仕組みなども設けられ、今では数多くの野鳥を見かけるようになった。

黄浦江の東側に新設された前灘は、世界水泳のために作られた東方体育センターを中心に、スポーツと文化と居住をテーマにした街づくりが行われている。上海2号店となる「蔦屋書店」が入る「前灘太古里」が作られたほか、前灘体育公園や新東里体育館などスポーツ施設が次々とつくられ、健康的な居住環境が作られている。

静安区張園地区

張園は100年以上前の石庫門住宅群が残る歴史あるエリアである。しかし近年は老朽化や不十分な保護から荒廃が進んでいた。

グローバル文化都市という目標を掲げる上海市は、張園の行政管轄である静安区を中心に、2018年に上海初となる保護性徴収プロジェクトを立ち上げた。住民に対する立ち退き、4年に及ぶ補修工事などを経て、2022年12月に新しい商業エリアとして一般開放された。

新しくなった張園は、かつて“東洋のパリ”と呼ばれた上海の代表的な石庫門住宅のエレガントな作りを十分に残しており、そこにライトアップを入れると何とも言えない高級感が街一体に漂う。その高級感に合わせて、グッチやクリスチャン・ディオール等のラグジュアリーブランドの旗艦店が数多く出店され、訪れる人に最近までここが荒廃していたエリアだとは感じさせないほど完璧に仕上がっている。

かつて住宅群だったということから、建築物が密集しており、狭い小道が多数存在する。これがまた迷路のようで、街角を曲がるたびに新しいお店に出会うことができ、来訪者の心を躍らせる。

上海大都市圏構想

大都市圏の構想には交通網の整備、つまり短時間で行き来できることが必要になってくる。

計画には新たに作る交通網についても織り込まれている。まず、蘇州、無錫、常州のラインに対しては、既に高速鉄道で1時間以内の移動ができているが、追加の手段として上海-蘇州間の地下鉄が2023年に開通した。寧波、舟山ラインでは、既に杭州湾大橋を通じて2時間ほどで上海間を移動できるようになったが、更なる一手として、上海-寧波、上海-舟山間の2本の海底トンネルの建設が予定されており、これが完成すると寧波や舟山まで1時間で移動できるようになる。

また、上海と周辺都市間の交通網の整備だけでなく、周辺都市間の交通網も強化している。具体的には、寧波、嘉興、蘇州、南通といった都市圏の都市をつないだ高速鉄道の建設が2022年11月より始まっている。

これほどのインフラ整備に資源を投下して大都市圏を作り出すのはなぜだろうか?

一言でいうと、中国の経済を押し上げる強い1手になるからである。中国の国家戦略上、半導体やEV車の開発強化が掲げられている。大都市圏に入る都市は既にこれらの産業における重要な開発・生産拠点となっており、企業や人的資源を集約し連携を強化することで、強靭なサプライチェーンを構築、安定した製品供給を実現し世界に打って出るという狙いがある。

EV車を例にいうと、上海は最大の消費地である一方で、テスラ等のギガファクトリーがあり生産拠点としてもキャパシティを持つ。また大都市圏に入る常州、無錫、寧波、蘇州は、蓄電池や集積回路、EV車の組み立てにおいて全国トップの地位である。現状は分業が明確でなくそれぞれが競争している状況であるが、これらをサプライチェーン上纏めていくことで、とてつもない競争力を生み出すことが狙いの一つとしてある。

パクテラグローバル本社

余談だが、弊社グローバル本社について少し紹介したい。弊社のグローバル本社は、上述の黄浦江両岸地区の一画の、徐匯浜江に2021年に移転した。黄浦江両岸地区でもふれたとおり、この地は陸家嘴に変わる第二の金融と貿易の中心地を目指している。弊社は金融向けのITサービスで多くのシェアを持っているという事もあり(IDC FinTech Global Rankings #45)、今後ここに集まる金融機関に向けてサービスを提供することを想定して、徐匯浜江にいち早く参入している。

終わりに

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<執筆者:周 武憲 パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社>