※本記事は、パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社が運営するWantedlyから加筆修正の上転載しています
はじめに
私たちパクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社(以下:PCJ)は2016年創業のデジタル領域に強みを持つグローバルファームで、世界基準のナレッジを有し、大手企業様を中心に日々コンサルティングサービスを提供しております。
2022年6月に、PCJは一般財団法人 日本アントプレナー学会と業務提携契約を締結し日本流のティール組織診断MAPのメソッドを盛り込んだ【日本初】となるティール組織診断システム(Teal Mapping)を共同で開発しました。
この記事では、なぜPCJが業務提携を結んだのか、そして業務提携で目指す日本企業や組織のあり方、未来を紐解きます。
インタビュイープロフィール
清水直樹 様
一般財団法人日本アントレプレナー学会 代表理事
大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。
坂本路子 様
一般財団法人日本アントレプレナー学会 評議員
起業家の両親のもとホテル、飲食、不動産、サロン、アミューズメント施設等の数々のビジネスを経営。起業〜売却ビジネスの経験を積み、ロンドンのビジネススクールに留学後にコンサルタントとして独立。中心となる強みは、人材組織開発とシステム化。現在は、ヨーロッパ、日本、アメリカの3拠点を行き来し、海外国内クライアントに向けて世界基準の情報を提供する海外ビジネスコーチでもある。
鈴木玄明
ビジネスデザイン事業部 マネージャー
通信機器メーカーでエンジニアとしてキャリアをスタートさせ、複数プロジェクトのPM、プリセールス、講師などを担当。その後、大手人材会社で数多くのDXに関する事業企画、事業開発立案から実行支援まで領域を限定せず幅広く従事。パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社へ入社し大手通信会社のサービス開発支援や自社の組織変革サービス開発全般をリード。
成功よりも失敗を多く経験し職域、領域の越境を繰り返すビジネス放浪者。
「出会う人々の成幸のために、新しい挑戦の場を創る」を個人パーパスとし日々奔走。
Q&A session
業務提携のきっかけ・背景
ーーまずはじめに日本アントレプレナー学会設立のきっかけをお聞かせ下さい。
清水様:
2010年に世界No.1(米INC誌による) の起業・経営アドバイザーであるマイケルE.ガーバー氏と出会ったことが大きなきっかけでした。
彼の著書を読み、その考えに共感し、私から彼にコンタクトを取って、幸いにも彼のビジネスパートナーになることができました。その中で彼の思想や起業家精神に改めて共感し、海外の優れたコンテンツや考えを日本に広めていきたいという気持ちで学会を設立しました。
その後、新しい組織形態である「ティール組織」の概念に出会い、これも日本企業の生産性向上につながっていくと感じ、新しいサービスとして展開を始めました。
ーー日本アントレプレナー学会は仕組み経営という経営コンセプトで多くの企業支援を行っているかと思います。その中で日本流のティール組織診断マップやティール組織診断カードを用いていると思うのですが、これらはどのような経緯で開発されたのかお聞かせください。
清水様:
元々、ティール組織診断マップはヨーロッパで独自に作成されたものでした。インテグラル理論をベースに作られた、組織を様々な項目から可視化できるマップで、これは組織を作る上での道標になると思い日本でも広めたいと思ったのですが、日本語版は存在していませんでした。ですので、大変でしたが自分達で翻訳作業をし、ビジュアル面でも工夫を施し、分かりやすく可視化しました。
ティール組織診断カードは、ターゲットである中小企業様相手にティール組織を説明する際に、理解することや目指すことの「難しさ」や「取っ付きにくさ」を払拭するために開発しました。ただ組織の診断をするだけでなく、「楽しく」診断できることが組織全体に浸透していくには必要だと考え、カードという形が、マップを活用しながら診断するのにマッチするのではないかと思い、作成するに至りました。加えて、カードという形にすることで自分達は何のために存在し、どのような価値観で働き、何を目指すべきなのかなどいったコミュニケーションが自然と生まれることも期待していました。
【日本アントレプレナー学会 清水様】
ーーありがとうございます。PCJが日本アントレプレナー学会さんと出会ったきっかけをお聞かせください。
鈴木:
きっかけは、私が坂本さん主催の研修に参加させていただいたことです。
VUCA時代、そしてコロナ禍で常識と思っていたものが非常識になり、非常識だったものが常識へ変化していく過程が凄まじいスピードで移り変わりしていく様を目のあたりにして、従来の組織構造では限界があり、変化についていけない人、ついていくだけで疲弊してしまい、生産性は向上できないと感じていました。それぞれが自分事化して幸せと思う働き方を実現するために、どのような手法があるのか仮説検証、リサーチを重ねていた時に、ティール組織の在り方に辿り着き、日本でティールメソッドを取り入れて活動し、発信していた日本アントレプレナー学会の清水さん、坂本さんにお声がけさせて頂きました。取り組み内容を聞いて共感、腹落ちできたので、まずは自身がティールファシリテーターになるために研修に参加させて頂き、関係を持たせていただくようになりました。
ーーでは、どのような背景があり、業務提携の締結に至ったのかお聞かせください。
鈴木:
清水さん、坂本さんからお話を聞いて、生産性向上のために日本企業にありがちなDXや新規事業開発が思うように進んでいない企業に対して成功確率を高める手段として活用できるのではと考えました。PCJはテクノロジーに強みを持っていますが、DXや新規事業開発は組織変革もセットであり、組織変革に対しては明確なサービスがなくクライアント支援の痒い所に手が届かない状況でした。組織変革の場合、気づきを与え行動変容を起こす必要がありますが、他者から言われるよりも自覚したほうが、圧倒的に行動変容が生まれやすいため、「自社、自身で気づく仕組みと変化、進化するための指標」の明確化が必要と感じていました。リサーチしていく中でティール組織診断MAPと体験カードを見たときに、これをシステムとして組み込み可視化できれば、クライアント様にとって我々が組織変革を支援するサービスのクライテリアになりえると思いご相談させて頂いたのが背景です。
坂本様:
私達はティールメソッドを日本でもっと効率よくローカライズできるのではないかと考えました。実は、ハンガリーでは既にデジタル化したティール組織診断ツールがあるのですが、自分達が色を見て確認するだけの機械的なもので、日本人の特性的には決して使いやすい、使いたくなると言えるものではありませんでした。よりビジュアル化されたツール開発をしたいという考えもありましたが、私たちはテクノロジー分野に関しては強くなかったため、開発に踏み切れずにいました。その中で、今回コンサル×テクノロジーの強みを持つPCJと業務提携することでより高いレベルでローカライズが実現できるのではないかと考えました。
【ティール組織診断MAP(Teal Mapping)システム画面イメージ】
シナジーを活かした活用方法
ーーこれまで企業様をご支援する中で感じる日本企業の課題はどこにあるか、考えをお聞かせください。
鈴木:
日本企業が生産性向上で抱える課題として大きく二つが挙げられます。
1つはDXを推進するための組織体制、人材育成体制が整っていないことです。経済産業省 が公開している「DXレポート2(中間取りまとめ)」によると部門横断型DXを持続的に実施している企業はたった5%しかなく、また戦略コンサルファームのリサーチ結果では、欧米ではDX化に30%成功しているのに対し日本は14%しか成功していません。DXが成功している企業はアジャイル型組織が根付いていて、目的に合わせ組織と人材の成長に繋げることでDXの成功確率を高めていると考えていますので、組織、人材の健康診断のように可視化できるティール組織診断は組織課題解決の有効な手段になります。
2つ目は、新規事業開発に対して前例主義から脱却できず、失敗を恐れて前に進みにくい企業文化があることです。ファーストリテイリングの柳井社長著書の「一勝九敗」にもある通り、新規事業の90%は失敗していると言われていますが、新規事業は不確実性が高く失敗前提ですので、新しい価値創造のための失敗については、成功の通過点と考える文化を醸成する必要があります。挑戦した失敗は恥ずかしいことではなく、失敗は肥料であり、成功という大輪を咲かせるための養分であることを新規事業メンバーが理解するためには、リーダーが率先して失敗体験を話すことで組織の失敗に関する心理的ハードルが下がります。
心理的安全性が担保されるとメンバーも失敗体験を共有でき、組織の透明性、公平性が生まれ、挑戦マインドが高まり、新たな挑戦を歓迎する企業文化が生まれ、新規事業の成功確率向上に繋がっていきます。そのためには、関わる全てのメンバーが「虚勢を張らず仮面を被らず、ありのままの組織、自分でいる」というティール組織の重要要素であるホールネスマインドを持つことが成功のキーになると考えています。
坂本様:
最近の潮流として、組織パーパスを策定し、社内外に発信し、従業員エンゲージメント向上や人材定着に繋げているケースが見受けられますが、課題はマネジメント層と現場ではパーパスの浸透度に乖離があることです。特にティール組織診断カード体験会の事例であったのは、社長と部下が同じグループで参加していただいたときで、社長が部下の選んだカードを見て驚愕していることがありました。カードは、「レッド」「アンバー」「オレンジ」「グリーン」「ティール」に該当する説明が書かれたものが1枚ずつあり、これが1セットで、組織構成に必要な20項目分あります。社長と部下とで異なるカードを選ぶことは少し気まずいシチュエーションだとは思いますが、やはりカードがあることでマイルドな意思疎通が可能になります。診断の結果を組織に持ち帰り「こういったギャップがあるよね」という認識を全体で共有した後、「このギャップを埋めるにはどこを変えればよいのか」という対話を始めることが、本質的な解決策の第一歩になるのではないかと考えています。
【日本アントプレナー学会 坂本様】
ーーありがとうございます。ではこれらの課題に対して、両者が業務提携することで生まれるシナジー効果をどのように活用できるのかお聞かせください。
坂本様:
デジタル化によって、私たちの診断ソリューションは中長期で見た時の全社的で最適な組織変革に活用できるのではないかと考えています。各組織やチーム、個人によって目指す組織形態は異なり、必ずしも診断において「ティール」を目指すこと、数値で「満点」を取ることが良いことでない場合も多いに存在します。ですので、文化を数値化・デジタル化することで、パーパスやビジョン、ミッションに対して何をどこに対して、どれくらいすべきかが分かるようになると思います。これには、PCJが持つコンサルティングの力もお借りして、本当にアクションを起こすべき項目やアクションの内容等もクライアント様と検討していくことが必要と考えています。
鈴木:
やはりDX、新規事業プロジェクトにはテクノロジーだけではなく、組織変革が重要です。日本アントレプレナー学会さんが持つ診断ソリューションを活用してこそ、本当の「デジタルトランスフォーメーション」が可能になると考えています。特に不確実性の高い新規事業には、スキル、経験以上にマインドや資質をもったメンバーで構成されることが重要だと考えており、タレントマネジメントシステムと組み合わせて、適材適所な人材の配置・確保・育成にも活用できるティール組織診断マップとティール組織診断カードは欠かせません。加えて、ティールの重要要素としてエボルーショナルパーパスというものがありますが、組織の状況や世の中の情勢、目指す方向性に合わせてパーパスを変化、進化させることで、より自分事化に繋がると我々は考えています。今回のティール組織診断サービスと親和性の高いパーパス策定、浸透させるためのワークショップも弊社はサービス*として提供していますので、こちらと組み合わせることで高い効果が発揮できると考えています。
【パクテラ・コンサルティング・ジャパン 鈴木】
ともに目指す未来
ーー最後の質問になりますが、業務提携によって共に目指す未来をお聞かせください。
坂本さん:
日本アントレプレナー学会のコアバリューの1つに「人として夢を持ち、夢を持っている人を応援していく」というものがあります。その中で私は日本中の組織を、公的な夢と私的な夢とを自由に行き来できる組織、そしてどちらの夢も叶えられるという可能性を持った組織を作っていきたいと考えています。ティール組織診断マップとティール組織診断カードなどの価値をテクノロジーやコンサルティングの力をお借りして最大化し、企業の採用活動、人材育成、M&Aなど様々な領域で活用し、そういった未来を創造していきたいと思っています。
清水様:
チームや組織はリーダーの器で決まると言われ、その人を変えようとすることがありますが、それは難しいことだと思っています。そこでこういったティール組織診断マップやカードを使うことで、自然と自分が成長しなければいけないことを理解し、リーダーが能力的にも人格的にも成長していくのに合わせて、組織全体も成長していく連動性のある未来を見出していきたいですね。
鈴木:
政府で新しい資本主義実現会議で人的資本の提唱、転換が叫ばれており、経産省でも「人材版伊藤レポート2.0」が2022年5月に更新、公表されていますが、今回の強みを活かした業務提携で人的資本経営に必要な5要素の内、「①動的人材ポートフォリオ、②知・経験のダイバーシティ&インクルージョン、③リスキル・学びなおし、④社員エンゲージメント」への変革アプローチに繋げられると考えています。まずはクライアント様が新規事業やDX推進など意欲的に新しいことに挑戦できる環境を構築し、本サービスを通じてトライ&エラーを繰り返し、成功確率を高めていくことで、DX化が進む企業が増える未来を目指しています。ひいては日本全体の生産性向上と幸せな働き方に繋がり、人的資本経営が常識の世の中になることを信じています。そのためには弊社のケイパビリティのみでは実現できないため、日本アントレプレナー学会さんのケイパビリティと組み合わせ、共創しながら共に目指すことが何よりも重要だと思っています。
終わりに
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